az(2/5) |
返信 |
最初にぼくがこの部屋にきてからたくさんの他のぼくがきた。
いまではぼくも含めて26のぼくがいる。
人には首からさげた板の模様がないとぼくたちの区別がつかないらしい。
ただあの人だけは26のぼくの違いがわかるらしい。
ここにきた人が板の模様を確認することもあの人はしなかった。
ぼくらはあの人のことが好きだった。
ご飯をくれるからでも世話をしてくれるからでもなくて、他の人と違ってぼくらをきちんと見てくれるから、道具を見るような目で見ないから。
26のぼくの中でネコであることとそのことは間違いなく共通することだった。
ぼくがこの部屋にきてから756回あの人がきたとき、いつもと何かが違った。
いつもよりずっと赤い目ですごくすごく悲しそうな顔をしながら部屋に入ってきた。
ぼくは何かが怖くて近寄れなかった。
他のぼくはいつもと変わらずあの人のそばにいたけれどぼくにはそれができなかった。
寄ってきている25のぼくにあの時の困った顔と申し訳なさそうな顔をしたときあの人の目から大きな水滴が落ちた。
いつものようにご飯の用意をしたあと真っ白な服で目の回りのふいたあの人はしゃがみこんで何かをつぶやいてeとhを抱え上げた。
2匹はちょっとびっくりしたようだけどあの人の温もりに満足そうだった。
そのまま2匹を抱えてあの人は部屋から出て行ってしまった。
結局最後まで怖い感じはなくならずぼくはあの人に近寄れなかった。
次にあの人だけがやってきた。
何となく気づいていたけどやっぱりeとhは戻ってこなかった。
前の怖い感じはなくてそれでも目は前のように真っ赤だったけど、ただいつもと違ったのはあの人の首にぼくらと同じ板がかかっていることだった。
投稿者 r9eifb | 返信 (1) | トラックバック (0)